第311章

 仕方がない。二人は以前、人前では仲睦まじい夫婦を演じると約束していたのだから。

 だから、どんなに気が進まなくとも、前田南は相手に手を引かれるがままにするしかなかった。幼稚園を後にして車に乗り込み、ククの隣である後部座席に落ち着いて初めて、南はようやく無意識のうちに安堵の息を吐いた。

 なぜだろうか。あるいは、個人的な事情のせいかもしれない。

 望月琛の隣に座るたび、あるいはただ二人きりになるだけで、胸の奥に言葉にできない居心地の悪さがこみ上げてくる。だがそれ以上に強いのは、やはり拒絶感だった。

 いっそ余計なことを考えるのはやめよう。南は隣に座るククに視線を移し、すぐに意識を切り...

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